総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




「叶兎くんが行くなら、私も行くから」



私は叶兎くんの瞳を見つめ返し、一歩も引かない決意を示した。

叶兎くんは一瞬だけ驚いたように私を見たけれど、やがて困ったように小さく息を吐いた。



「…分かった。」



最近の叶兎くんは、私が一度言い出したら絶対に意見を曲げないことをよく分かってくれている気がする。

止められないと悟ったのか、素直に同行を許してくれた。



「今日中に対応しないといけない残りの資料や事務作業は、俺がここで全部片付けておく。何かあったらすぐに連絡して」

「ありがと、時雨」



時雨くんに屋敷の後事を託し、執事さんに車を出してもらって特殊警備隊の本部へと向かう。



到着後、叶兎くんが上層部へと直接事情を説明した。

あの悪意ある切り取り映像が拡散されている最中でも、特警の上層部の人たちは変わらず叶兎くんのことを深く信頼してくれていたことが幸いだった。



今回の作戦のために「洗脳」の異能を持つ朔の協力を仰ぎたいという旨も、実際には叶兎くんの方が立場が上ということもあって特に問題もなく、暴走して捕らえられた吸血鬼との面会の許可が降りた。



「天羽さんが到着するまで、あちらの待機室でお待ちください」



隊員に案内され、私と叶兎くんは狭い待機室へと通された。

「失礼します」とドアが閉まり、部屋の中に二人きりになる。


………あ。


その瞬間、心臓がトクンと小さく跳ねる。

あの日の出来事があって以来、私たちが完全に二人きりの空間になるのは、これが初めてのことだったから。



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