総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
怖かったのは、暴走した状況じゃない。
傷つけられているはずの胡桃にあんな風に真っ直ぐに縋られたことを、心のどこかで『嬉しい』と思ってしまった自分自身が…心の底から恐ろしかった。
あの時の胡桃を見て、あろうことか「これで俺だけのものだ」と独占欲が満たされて。
助けに来てくれた胡桃を見て、「来てくれた」という純粋な感謝ではなく、「捕まえた、逃がさない」と歪んだ喜びを抱いた。
あの瞬間、俺の頭は完全に壊れていたんだと思う。
…それがすべて合成血のせいだけではないことも、本当は分かっている。
前からずっとそうだった。
この前、胡桃にすべてをぶちまけたあの言葉だってそうだ。
独占欲。
醜くて、みっともなくて、自分の力ではどうしても制御しきれない、執着心。
あの狂った男に投与された合成血は、もう体内には一滴も残っていない。
それは自分自身の感覚ではっきりと確信できている。
だから、またあの男に同じような薬を打たれない限りは、衝動のままに胡桃に牙を剥くことなんて、絶対にないはずだ。