総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「……胡桃。」
たった二メートルの距離なのに、俺は自分から踏み出すことすらできないなんて。
……触れたい。
触れたい、胡桃に……。
最後には、そんな単純で剥き出しの一言が、頭の中を埋め尽くして占領した。
くだらない理屈も、自分への恐怖も、後悔も、全部の思考を力づくで押しのけて、ただそれだけ。
目の前に立つ胡桃を見つめると、俺の葛藤を察しているのか、瞳は少し不安そうに揺れていた。
だけど決して俺から逃げようとはしない。
怯えて目を逸らすこともなく、ただ真っ直ぐに俺を受け入れようとしてくれている。
ゆっくりと手を伸ばして、胡桃の滑らかな顎にそっと触れる。
今度は途中で止めることはしなかった。
……やっと、触れられた。
「……っ、胡桃……」
もう限界だった。
そのまま腕に力を込めて胡桃の身体を引き寄せると、強い力でその小さな体を強く、強く抱きしめた。