総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
【side胡桃】
何が起きたのか分からなくなるくらい、突然、強い力で身体を引き寄せられた。
「わっ……!」
驚いて小さな悲鳴が口から漏れる。
気づいた時には、私の顔は叶兎くんの広い胸の中にすっぽりと押し付けられていた。
ぎゅっと、痛いくらいに強く抱きしめられている。
叶兎くんの心臓が、トクトクトクと、信じられないほどの速さで脈打つ音が鼓膜に直接響いてきた。
叶兎くん……すごく心臓がバクバク言ってる…。
多分、私も人のこと言えないけど。
それだけじゃない。
背中に回された腕が、洋服越しでもはっきりと分かるくらい、小刻みに震えていた。
心配になって顔を見ようとそっと上を向こうとしたけど、叶兎くんの手が私の後頭部を固定するように包み込んでいて、びくともしない。
頑なに、今の自分の表情を私に見せまいとしているみたいだった。
だから私は顔を上げるのを諦めて、代わりに自分の両腕を叶兎くんの背中にそっと回した。
……あったかい…。
たった数日間、少しだけ距離を置いて離れていただけなのに。
こうして腕の中に収まっているだけで、胸の奥からじわじわと涙が出そうなほどの安心感が湧き上がってくる。
今まで当たり前みたいに隣にいたのに…離れてみて初めて、自分の中で叶兎くんの存在がどれほど大きいのかを痛いほど思い知らされる。