総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
それでもさすがは叶兎くんと言うべきか、素早く私の傍から離れると、一瞬でいつもの冷静沈着な完璧な表情へと切り替えてみせた。
ガチャ、とドアが開く。
「おまたせ」
そして朔がふらっと部屋に入ってきた。
何事もなかったかのようにすくっと立ち上がった叶兎くんが、私の様子をちらりと横目で見てくる。
それにつられるように、朔も不思議そうに私の顔を覗き込んできた。
「くーちゃん、なんか顔すごい赤いけど大丈夫?この部屋暑い?」
「だ、大丈夫!気のせい!」
声が裏返りそうになるのを必死に抑えてブンブンと首を振る私に、朔は首を少し傾げた。
「そう?それならいいけど…。なら、準備できてるから行こうか」
それから三人で地下へ向かう廊下を進む。
ひんやりとした空気の漂う通路の突き当たりの部屋。
そこに待機していた特殊警備隊の職員が、手慣れた動作で壁のパネルに認証キーをかざすとガシャリと重々しい電子音が鳴り響き、厳重なロックが解除された。
部屋には拘束された吸血鬼がぽつんと一人だけ座らされていた。
その目は朦朧としていて、度重なる暴走のせいで、脳や身体に酷い後遺症が残ってしまっているのだろう。
朔は迷いのない足取りで、その吸血鬼に向かって一歩前に出た。
「……始めるね」
小さく呟くと同時に、朔は正面に立つ。
その瞬間、朔の黄色い瞳が、怪しげな光を帯びてきらりと輝いた。