総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
── ウゥゥゥゥン!!
突如として、施設内に鼓膜を破らんばかりのけたたましい警報が鳴り響く。
天井に設置された赤いランプが激しく回転し、視界を不気味に染め上げる。
壁のスピーカーからは甲高いサイレンが割れるような大音量で流れ出し、一瞬にして周囲の空気がパニックへと塗り替えられた。
ドタドタと、廊下を無数の重い足音が慌ただしく走り抜けていく。
何事かと私たちが身構える中、叶兎くんが持っていた特警用の通信機から、ノイズ混じりの緊迫した声が響き渡った。
『東区画で新たな能力暴走が発生!現在、街の外へ向けて逃走中! 繰り返す──』
「…胡桃、行こう」
通信を聞いてすぐ、叶兎くんの合図で私たちは部屋を飛び出した。
息を切らしながら長い廊下を駆け抜け、外へと飛び出して街の東門へと急ぐ。
巨大な東門をくぐり抜けて吸血鬼の街を一歩外へと出た瞬間、肌を刺す空気がガラリと変わる。
そこは、普通の人々が穏やかに暮らしている人間の街。
私たちが普段暮らしている本部のある街は、基本的に能力を持つ吸血鬼やハンターだけが集まる特殊な街。
けれどそこから一歩足を踏み出せば、一般の人間たちが暮らす世界が広がっているのだ。
その平和なはずの住宅街の通りに向かって、理性を失って暴走した吸血鬼が、雄叫びを上げながら恐ろしい速度で走っていくのが見えた。
「うわぁぁっ!逃げろ、化け物だ!」
そこかしこから悲鳴が上がり、人々が荷物を放り出して逃げ惑う。
すでに特殊警備隊が先回りして展開していたけど、何しろ一般の人間が大勢いる街のど真ん中だ。
住民の避難誘導が全く追いついておらず、現場は凄惨な混乱を極めていた。