総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




ハンターたちを煽るような挑発でもなければ理不尽に疑われたことに対する怒りをぶつけるでもない。

ただ今この場で最優先すべき『事実』だけを淡々と突きつける、いつもの聡明な叶兎くんの話し方。


銃口を向けたまま睨み合う緊迫した空気の中、琥珀が少し困ったように眉を下げて口を開く。



「……君は今、あんまり表に出てこない方がいいと思うよ」



琥珀はあの日、私が叶兎くんに吸血されていた現場に居合わせ、応急処置をしてくれた張本人だ。

だからこそあの動画が都合よく切り取られたフェイクであることも、叶兎くんが罠にはめられただけだということもすべて分かっているはず。



だけど、琥珀は『ヴァンパイアハンター』という組織の人間だ。


いくら真実を知っているからといって、世間がこれだけ大炎上している中で…立場上、表立って吸血鬼を庇うような発言はできないのだろう。


特警の隊員たちが今も必死になって周囲の住民を安全な場所へと誘導しているけど、避難は遅々として進んでいなかった。



──バンッ!!!


その時、再び乾いた銃声が響き渡った。



我慢しきれなくなったハンターの一人が、ついに暴走吸血鬼に向けて引き金を引いたのだ。

弾丸は急所を外れて男の肩に命中し、その凄まじい衝撃で暴走していた吸血鬼はその場に激しく倒れ込んだ。



「う、あ……っ……」



地面に倒れ伏した吸血鬼の身体は、ビクビクと細かく痙攣している。

幸いにも命に別条はないようだけど、傷口からの出血がひどく床を赤く染めていく。



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