総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「……気持ち悪いくらい綺麗に消えてるね」
「ほんとに」
叶兎が手元にペンを置くと、髪をわずかにかき上げた。
連日の無理な調査による疲労のせいか、瞳は少しだけ眠そうに細められている。
その、どこか気の抜けた表情を見て、俺は胸の中にあった素朴な疑問を口にしてみることにした。
「……てかさ、ずっと気になってたんだけど。胡桃ちゃん今日はいないの?」
いつもなら、叶兎の視線の先には必ずと言っていいほどあの子がいる。
今日に限ってその姿が見えないのがどうにも不自然で。
俺の問いに叶兎は一瞬だけ気まずそうに視線を泳がせ、それから小さくため息をついた。
「……あー、……ハンター本部のところに行ってる」
「………………え?ハンター本部…ひとりで?」
思わず、次のファイルを閉じかけようとしていた俺の手がピタリと止まった。
指先が書類の端を掴んだまま、硬直する。
「……それ大丈夫なの?」
「……大丈夫じゃないから、さっきから苛ついてんだけど」
低く地を這うような声。
明らかに不機嫌なのが目に見えてわかる。