総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ



どうやら胡桃ちゃんからの連絡ではなかったらしい。

画面を盗み見ると、そこには『楪琥珀』という名前が表示されていた。


叶兎は一瞬の躊躇もなく、冷徹な声で通話に応じる。



「……何の用」



声のトーンが一段どころか、数段低くなっている。

俺は手元のファイルをめくるフリをしながら、限界まで耳をそばだてた。



『あー、赤羽くん?栗栖天音くんに用があるんだけど。俺、連絡先知らないからさ、繋いでくんない?』



携帯の向こうから、楪琥珀の軽い声が漏れ聞こえてくる。



「……胡桃は?」



挨拶も前置きも一切すっ飛ばして、叶兎は核心だけを突いた。



……というか、俺?

楪くんが俺に用事って、一体全体なんの用だよ。




『あぁ、胡桃なら俺と一緒にいるよ。ちょっと色々あって、うちで預かることになったから』

「…………は?」



叶兎の口から、信じられないくらい低い地声が漏れた。



──預かる?


その何気ない言い方の裏に隠された含みを、俺と叶兎は一瞬にして嗅ぎ取った。

俺たちは無言のまま互いに顔を見合わせると、嫌な予感が背筋を駆け上がる。


< 399 / 401 >

この作品をシェア

pagetop