総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
どうやら胡桃ちゃんからの連絡ではなかったらしい。
画面を盗み見ると、そこには『楪琥珀』という名前が表示されていた。
叶兎は一瞬の躊躇もなく、冷徹な声で通話に応じる。
「……何の用」
声のトーンが一段どころか、数段低くなっている。
俺は手元のファイルをめくるフリをしながら、限界まで耳をそばだてた。
『あー、赤羽くん?栗栖天音くんに用があるんだけど。俺、連絡先知らないからさ、繋いでくんない?』
携帯の向こうから、楪琥珀の軽い声が漏れ聞こえてくる。
「……胡桃は?」
挨拶も前置きも一切すっ飛ばして、叶兎は核心だけを突いた。
……というか、俺?
楪くんが俺に用事って、一体全体なんの用だよ。
『あぁ、胡桃なら俺と一緒にいるよ。ちょっと色々あって、うちで預かることになったから』
「…………は?」
叶兎の口から、信じられないくらい低い地声が漏れた。
──預かる?
その何気ない言い方の裏に隠された含みを、俺と叶兎は一瞬にして嗅ぎ取った。
俺たちは無言のまま互いに顔を見合わせると、嫌な予感が背筋を駆け上がる。