箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
 それからすぐに応募手続きを取り、限られた時間、面接に向けて死に物狂いで勉強した。

 パパの書庫にある専門書を片端から読みあさり、一介の応募者として面接会場の列に並んだ私。筆記試験はさほど難しくなかったのがラッキーだった。手応えを感じてそのあとの面接は比較的リラックスして受けられたからだ。書庫で読んだ古典的な建築論や、実際に海外の別荘で感じた不便さを話したら面接官は興味を持ってくれ、幼少期からの英才教育がそこで役に立った。「不動産の本質」や「海外の富裕層が求めるホスピタリティ」を熱弁してしまった。

 終わってから失敗した、そう思ったのは喋りすぎたことだ。あの面接が功を奏すかは賭けだ、そう思っていた私だが手元にはなんと採用通知が届いたのだ。

 自分の力が認められた……! この時の私はそう思った。

 まだ知らなかったのだ。

 自由を掴んだつもりで、私は自ら用意された新しい鳥籠へと飛び込んだだけだったことに。

 その籠の扉はパパと、そして私の知らないあらゆるものが、冷徹な計算のもとに閉ざそうとしていることも知らぬまま。
 
 私という存在が、両家を繋ぐための巨大な取引材料に過ぎないという真実にたどり着くのは、まだずっと先の話。

 自力で勝ち取ったと信じて疑わないこの合格が、実は何よりも強固な鎖だったのだと……この時の私は想像すらしていなかった。
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