箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
巳波――今までこの名前で顔色を変えられたことが多々あった。
そして勤め先のFJリゾーツも言わば同じ不動産業界。巳波と聞けば「え?」と振り返られたが、遠縁の親戚であると軽く返せばそれ以上何も告げられることなく、周りは軽く流してくれた。
今までは巳波財閥のお嬢様、そのカテゴリーにはめられて、持ち上げられたり距離を開けられたり。煽てられたり擦り寄られたりすることばかりだった。だから私も素の自分など晒せるわけがなく、いつも愛想笑いを浮かべて人の顔色ばかりを窺っていた。
それをしんどいと、そう思ったことはない。それがごく当たり前で普通の事だったのだ。それを普通だと思っていたからこそ、それにしんどくなった。けれど生まれてしまった以上仕方ない。私は巳波財閥の一人娘としてその責務を担う必要があるのだから。
愛されて幸せだ。
両親に愛され、溢れるようにいろいろなものを与えてもらっている。贅沢な話だ、それもわかって胸の中でこぼす。
――それでも満たされないのはどうしてだろう。
私は年を重ねるほど、心の中に空いてしまった小さな穴を塞げずにずぅっとなにかをこぼし続けている。そのなにか、それの答えがずっとわからなくて、だからより満たされることはない。この隙間を埋めてくれるものは一体何だろう。いろんなものに手を伸ばしてやってみたり、手に入れてみたりしたけれどピタリとはまってはくれない。
それがここで働くようになってわかったのだ。
心が潤うように、満たされていくものがある。喜びと共に満ちていく。これが私の欲しかったもの、それに気づく。
対等でいられること。
その当たり障りなく過ごしてくれる距離感、同じように、特別扱いされないこと。それが私を精神的に楽にさせた。
嬉しかったのだ、対等でいれることが。もちろん区別はある、でも差別されない。「巳波さんは」「巳波さんだから」そんな風に線引きされないこと、それが私には特別で体感したことのない喜びだったのだ。
「巳波さん、こっちおいでよー」
「これ知ってる? 今度誘うね」
気にかけてもらえることもとても自然で、周りも同じようにされている。私だけ、そんなことはない。お膳立てされたり顔色を窺われることもない。
自然――それがどうしようもなく嬉しかった。
だからこの環境で私はもっと頑張りたいと思う。私がもっと求められるように、必要とされたい。そう思えた。
そして勤め先のFJリゾーツも言わば同じ不動産業界。巳波と聞けば「え?」と振り返られたが、遠縁の親戚であると軽く返せばそれ以上何も告げられることなく、周りは軽く流してくれた。
今までは巳波財閥のお嬢様、そのカテゴリーにはめられて、持ち上げられたり距離を開けられたり。煽てられたり擦り寄られたりすることばかりだった。だから私も素の自分など晒せるわけがなく、いつも愛想笑いを浮かべて人の顔色ばかりを窺っていた。
それをしんどいと、そう思ったことはない。それがごく当たり前で普通の事だったのだ。それを普通だと思っていたからこそ、それにしんどくなった。けれど生まれてしまった以上仕方ない。私は巳波財閥の一人娘としてその責務を担う必要があるのだから。
愛されて幸せだ。
両親に愛され、溢れるようにいろいろなものを与えてもらっている。贅沢な話だ、それもわかって胸の中でこぼす。
――それでも満たされないのはどうしてだろう。
私は年を重ねるほど、心の中に空いてしまった小さな穴を塞げずにずぅっとなにかをこぼし続けている。そのなにか、それの答えがずっとわからなくて、だからより満たされることはない。この隙間を埋めてくれるものは一体何だろう。いろんなものに手を伸ばしてやってみたり、手に入れてみたりしたけれどピタリとはまってはくれない。
それがここで働くようになってわかったのだ。
心が潤うように、満たされていくものがある。喜びと共に満ちていく。これが私の欲しかったもの、それに気づく。
対等でいられること。
その当たり障りなく過ごしてくれる距離感、同じように、特別扱いされないこと。それが私を精神的に楽にさせた。
嬉しかったのだ、対等でいれることが。もちろん区別はある、でも差別されない。「巳波さんは」「巳波さんだから」そんな風に線引きされないこと、それが私には特別で体感したことのない喜びだったのだ。
「巳波さん、こっちおいでよー」
「これ知ってる? 今度誘うね」
気にかけてもらえることもとても自然で、周りも同じようにされている。私だけ、そんなことはない。お膳立てされたり顔色を窺われることもない。
自然――それがどうしようもなく嬉しかった。
だからこの環境で私はもっと頑張りたいと思う。私がもっと求められるように、必要とされたい。そう思えた。