箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
「巳波さん、これもお願いしていいかな?」

「はい! 同じ会議室で良いですか?」

 上司の杉山さんに確認したら優しく頷いてくれたので、私も笑顔で頷き託されたファイルを両腕に抱えてオフィスを出た。

「こら。持ちすぎ」

「え?」

 両腕に抱えていた太く大きなファイルのひとつがするりと腕から抜かれた途端に視界が開いた。その開かれた視線の先に映る血管の浮く大きくて綺麗な手……私はこの手を知っている。

「前見えてる? 割と重いじゃんか。いっぺんに持つ必要ない」

「……巳波さんって思ったより力があるねって言われました」

「プッ……だから余計気合い入れたの? そこ頑張るところじゃないだろ。手伝うから声かけて?」

「あり、ありがとうございます……」

 どもったお礼にクスリと笑うその横顔がかっこいい。

「頑張るのはいいけど、気負いすぎるなよ? 無理してるとあとで皺寄せがくる」

「無理なんて……これくらいちゃんとやりたいだけです」

「姿勢は認めるけど、見ていて危なっかしいんだよな。頼るのも大事なことだよ? 今は新人なんだから余計に周りに甘えて頼ればいい」

 そう言ってくれるのは入社してから気にかけてくれる玄野(くろの)さん。

「危なっかしいのは……その、最初の印象のせいでしょう? あれは、その……」

「勝手に引っかかって返事してんだもんな」

「ちが……っ! だって戻すの忘れてたから!」

 必死に言い返したらまたプッと噴き出されてしまう。玄野さんはその時を思い返しているのか、私だって思い返して頬を赤く染めてしまった。
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