箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
 それから数日後、上司である杉山さんに呼び出された私は吉報を告げられる。

「え? 本当ですか!?」

「巳波さんのこだわり、上層部も高く評価していたよ」

「あ、ありがとうございます。嬉しいです……」

「これからも期待しているから頑張ってね!」
 
 客室のアメニティに、私が幼い頃から愛用しているオーガニックコットンのタオルと、希少なハーブを使ったバスオイルを提案した。そんな私の企画がなんと採用してもらえることになったのだ。自分の感性と思いが認められたのだと、空も飛べるような心地だった。

 この喜びを一番に伝えたい人、その顔が浮かぶのは誰かなどもう決まっていた。

 私は玄野さんを探してオフィスを走り回るが、なかなかつかまらない。忙しいのかな、そう気持ちを切り替えて私も自分の業務に取り掛かりつつも、玄野さんと会えるタイミングを待っていた。

 定時後、更衣室に向かう道すがらオープンスペースの自動販売機前から男性の声で聞き慣れた名前が呼ばれた。

「おい玄野、アメニティプロジェクトの発注の件だけどさ。いくらなんでもあの原価で通すのは無理だろ。何であれが通るわけ? そもそも『特別助成金』って……出所どこなんだよ。あんな不自然な数字、会計監査で引っかかるぞ」

「……その件は俺が責任を持つ。上からも了承済みだ。そこは黙って処理してくれない?」

 ――特別助成金……?

「あっそー。相変わらず玄野はいろいろ面倒ごと押しつけられてんだな」

「……まぁな」

「おぼっちゃんも大変だな」

「うるせぇ」

 ――おぼっちゃん? なに、どういう……。

 聞きなれないワードと違和感の数々に思考がぐるぐるとうまく働かない。なによりも気になるのはアメニティプロジェクトの発注の件……それは私の企画の話ではないのか?

「あの原価で通すのは無理……?」

 不自然な数字、会計監査で引っかかる……その言葉が脳裏に張り付いて離れない。そこに特別助成金? 一体どういうことだ、私はなにか間違いを犯してしまったのだろうか。
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