箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
頭を殴られたような衝撃に、私はその場にへたり込みそうになった。
自力で勝ち取ったと思っていた内定も、認められたと思っていた感性も。すべてはパパが買い与えた、精巧な「おままごと」の道具に過ぎなかったのだ。そして……。
『君の補佐役です』
そう言った玄野さん。
「補佐役……」
こぼれ落ちた言葉、その意味に気づいて愕然とする。
玄野さんは私が巳波の娘であることをはじめから知っていたのか。知っていて、親身にフォローして支えてくれた。
私が巳波の娘だから、フロンティア・ホールディングスのために……。
補佐役という名の監視役だったのか。
パタン、と自室の扉を閉めてより絶望感に襲われる。あのあとまだなにかパパと岩谷さんが話していたけれどもう耳には入ってこなかった。そんな余裕がないほど胸が締め付けられている。パパが告げた言葉、その中にあった「見合いが進む」その意味に。
「……私は、玄野さんの家と結婚するのね……」
でもその相手はきっと玄野さんではないのだろう。おそらく本社に在籍する、役員紹介欄に記載されていたご子息。そちらが私の相手になるはずだ。なぜなら、巳波財閥の血筋を継ぐ婿養子という立場は、単なる結婚ではない。我が家のような家系が他家と縁を結ぶ際、相手に求められるのは個人の資質以上に家格の正統性だ。玄野家における長男――つまり、本家の正統な後継者という肩書きは、政略結婚という名の契約書において、最も価値のある印章に等しい。
玄野本家の資産や人脈を丸ごと引き連れてくる合併となるのだ。そうなれば、本家の全権を握るはずの長男が選ばれるのが両家にとっても最大のメリットに繋がる。そしてパパがその選択を取らないわけがないのだ。
「……っ!」
涙がこぼれ落ちる。自分の意志を無視するように瞳からボトボトと床に染みを作っていった。
馬鹿みたいだ。自分の足で立てているなど傲慢だった。自分を過信しだしてズレた企画を自信満々に提出し、それを採用されて舞い上がった。自分が社会で成長したと、うぬぼれていた。
玄野さんと近づいた距離、それも仕事を通じて自分が認められたからだと思っていた。
最初は新人だから、目が離せないからとフォローしていてくれているのだろうと。
でも日が経つほど、いろんなことを話して時間を過ごしたことで変わり始めたものがあると感じていた。でもそれも私の勘違いだ。
「馬鹿みた……っ」
涙が止まらない。拭っても拭っても瞳からあふれ出てくる。それは羞恥や情けなさも含まれて……。
最初から玄野さんにはビジネスのひとつだったのだ。
私は巳波財閥の娘で、玄野さんの家のため、企業のため、お兄さんのために私に近づいていただけなのか。
私に向けられたあの熱い眼差しも、丁寧に重ねられた言葉も……すべては本家の次男として、兄という未来の主君に捧げる花嫁として私を導いていくだけの職務に過ぎなかったのだ。
自力で勝ち取ったと思っていた内定も、認められたと思っていた感性も。すべてはパパが買い与えた、精巧な「おままごと」の道具に過ぎなかったのだ。そして……。
『君の補佐役です』
そう言った玄野さん。
「補佐役……」
こぼれ落ちた言葉、その意味に気づいて愕然とする。
玄野さんは私が巳波の娘であることをはじめから知っていたのか。知っていて、親身にフォローして支えてくれた。
私が巳波の娘だから、フロンティア・ホールディングスのために……。
補佐役という名の監視役だったのか。
パタン、と自室の扉を閉めてより絶望感に襲われる。あのあとまだなにかパパと岩谷さんが話していたけれどもう耳には入ってこなかった。そんな余裕がないほど胸が締め付けられている。パパが告げた言葉、その中にあった「見合いが進む」その意味に。
「……私は、玄野さんの家と結婚するのね……」
でもその相手はきっと玄野さんではないのだろう。おそらく本社に在籍する、役員紹介欄に記載されていたご子息。そちらが私の相手になるはずだ。なぜなら、巳波財閥の血筋を継ぐ婿養子という立場は、単なる結婚ではない。我が家のような家系が他家と縁を結ぶ際、相手に求められるのは個人の資質以上に家格の正統性だ。玄野家における長男――つまり、本家の正統な後継者という肩書きは、政略結婚という名の契約書において、最も価値のある印章に等しい。
玄野本家の資産や人脈を丸ごと引き連れてくる合併となるのだ。そうなれば、本家の全権を握るはずの長男が選ばれるのが両家にとっても最大のメリットに繋がる。そしてパパがその選択を取らないわけがないのだ。
「……っ!」
涙がこぼれ落ちる。自分の意志を無視するように瞳からボトボトと床に染みを作っていった。
馬鹿みたいだ。自分の足で立てているなど傲慢だった。自分を過信しだしてズレた企画を自信満々に提出し、それを採用されて舞い上がった。自分が社会で成長したと、うぬぼれていた。
玄野さんと近づいた距離、それも仕事を通じて自分が認められたからだと思っていた。
最初は新人だから、目が離せないからとフォローしていてくれているのだろうと。
でも日が経つほど、いろんなことを話して時間を過ごしたことで変わり始めたものがあると感じていた。でもそれも私の勘違いだ。
「馬鹿みた……っ」
涙が止まらない。拭っても拭っても瞳からあふれ出てくる。それは羞恥や情けなさも含まれて……。
最初から玄野さんにはビジネスのひとつだったのだ。
私は巳波財閥の娘で、玄野さんの家のため、企業のため、お兄さんのために私に近づいていただけなのか。
私に向けられたあの熱い眼差しも、丁寧に重ねられた言葉も……すべては本家の次男として、兄という未来の主君に捧げる花嫁として私を導いていくだけの職務に過ぎなかったのだ。