箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
episode1...知らなかった気持ち、煌めく世界
「佳乃は23歳の誕生日はなにが欲しいんだ? なんでも買ってやるぞ」

 パパに夕食の後のコーヒータイムでそんなことを尋ねられて私は息を呑んだ。

「大学もこの春に無事に卒業だし、どこか行ってみたいところとかでもいいわよ? ママと一緒にパリ旅行でもどう?」

「パリのホテルに泊まるのはいいかもしれないな。今後の為にもどんな雰囲気か見ておきたいし、周辺も……」

「パパ、お仕事の話は今はしないで。佳乃の卒業記念もあるし、なによりお誕生日なのよ?」

「ああ、そうだな」

 ふたりが勝手に盛り上がって笑い声をあげている。本人の意見や気持ちなどなにも聞いていないのにいつもこうだ。なにも言わず笑顔で受け流してきた私にも責任はあるのだろう。でも――。

 ――大学までちゃんと言うことを聞いて、真面目に暮らしてきたわ。私ももう学生じゃないのよ。

 んん、ともう一度覚悟を決めるように息を呑み、私はパパとママに視線を向けて口を開いた。

「働きたい」

「……は?」

 私の発した言葉にママは固まった。

「仕事、したいの。就職して普通にお仕事したい」

「佳乃……なにを言っている?」

「私そんなにおかしなこと言ってる? 大学卒業して一般企業にお勤めするのみんなしてることよ。私も同じように普通に……」

「みんなと同じなんて……佳乃はみんなと同じじゃないでしょう?」

 ――え?

「そんな……お仕事するって……あなたからも言ってください。佳乃が就職する必要なんかないって」

 ママが必死にパパにそう告げている。働かせたくない、というより理解できない、そんなニュアンスを感じる。顔を引きつらせて笑って言うのだから。

「いきなりそんなことを言われてもだな……」

「いきなり? そうかもしれないけれど、どうして考えられないことなの? みんなしてる、普通のことよ」

「だから佳乃はみんなと違うでしょ?」

「なにが違うの?」

「あなたは! 巳波財閥の一人娘でしょう! みんながしてるような普通のことはしなくていいの!」
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