箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
鏡の中に座らされている精巧な着せ替え人形を見つめる私がいる。かつて夢見た自由はもうどこにもない。
このあと私は、与えられた新しい鳥籠の中で、二度と羽を広げることなく、ただ巳波の娘という役割を全うするだけなのだ。
「え? ママは一緒に行かないの?」
「正式なお見合いの前に、一度二人だけで会ってお話ししたいって、先方がおっしゃってくださったの。なんて粋な計らいなのかしら!」
ママは上機嫌で、私の首に最後のネックレスを身につけさせる。首にかかる重量がより重い枷のようで憎らしいほど輝きを放つのが残酷だ。
「佳乃とゆっくりお話ししてみたいからって、情熱的な方よ~素敵だわ」
「……そ、そう」
初対面だから? なにを話したいというのだ。家同士のビジネス婚なのに情熱も何もない。貴政さんは私ではなく巳波財閥にしか興味などないだろうに。そんなことを胸中で思っているとママが笑顔で言ってくる。
「私たちは一足先に向かって、パパと会場で待ってるから。エスコートしてもらって、ゆっくり来たらいいわ。ああ、楽しみね、佳乃」
「……そうね」
お見合い会場の料亭へ向かう前に指定されたホテルのラウンジで待ち合わせ、そこから会場まで彼にエスコートしてもらう手はずになっているらしい。もう好きにしてくれと思った。こんな茶番に付き合わされる貴政さんにも申し訳ない気持ちになる。
――財閥へ婿入りしようと思うとそれほど気を遣わないといけないのかな。
それを思うと幸せな結婚生活など容易に想像など出来る気がしない私だった。