箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
柊也side...諦めたくないこと、手にしたいもの
「自分の好きって思うもの、もっとあるんだろうな……」

 そうこぼした彼女の声で、泣いているのかと思った。ポツリと呟かれたその切なげで頼りない声は自然と俺の神経を向けさせる。

 知らないことがたくさんある。
 世界は自分が思うよりずっと広い。それでも自分がいれる世界なんてちっぽけなもので、与えられる環境は限られた場所に過ぎない。

 好きなものを見つけられる人生はなんて幸せなことだろう。
 選べる人生ほど、贅沢で尊いものはない。その選択を当たり前と思わずに許される環境にいることを知った時、人はもっと自分の人生に価値を見出せるのかもしれない。

「探せばいいんじゃない?」

 どうしてこんな無責任なセリフを吐けたのだろう。
 バスのブザーひとつ押すのさえ、許しを得ようとするのに。ラーメン一杯食べたい気持ちさえ言葉にできずに暮らしている彼女に。

 自分のやりたいことや胸に秘めた思いを言葉にすることさえせず、自分の人生を受け入れている彼女に。
< 43 / 74 >

この作品をシェア

pagetop