箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
「巳波財閥の令嬢との見合い話が進みそうだ」

 父親に呼び出された俺は彼女――巳波佳乃のプロフィール一式を渡された。

「どうして仕事を?」

 巳波財閥ともあろう巨大組織の一人娘が働く意味が全くわからない。しかも分家会社の俺のいるところで。

「一人娘の我儘だろう」

「我儘?」

「深く考えなくていい。本人が楽しく働ければそれでいいと巳波の社長からも告げられている。ただ遠縁の親戚という肩書きで入社させるとのことだ。本人もそれは納得しているそうだ。だから周囲にはバレないように柊也がうまくフォローしてやれ」

「はぁ……」

「彼女はお前の義姉になるんだ。玄野に対しても好感が上がるように丁重に扱うように」

 資料をザッと見るものの生粋のお嬢様の人生を歩んでいる彼女。父親の口から放たれた「我儘」という言葉に疑う気持ちもなく、これは箱入り娘の社会体験デビューなんだろうとぼんやり思っていた。

 ――結婚前に思いつきみたいにOL気分を味わってみたくなったのかな。

 わざわざ素性を隠すのはなぜなのか。巳波の社長までもが小細工する意味がその時はよくわからなかった。誰にバレたくないんだろう、そんなことを思うものの正直どうでも良かった。

 ――俺には関係ない。

 たとえ、兄貴の嫁になる人だとしても。俺にとっては義姉になりそれなりに近しい人物かもしれないが、特に関わりのない、体裁だけの人になるだろう。そう思った。
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