箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
 兄の貴政とは5歳離れていて、仲が良いか悪いかだと……悪いだろう。貴政とは腹違いの兄弟になる。

 貴政の母は俺が生まれる前に亡くなっていた。過度なストレスが心身に蓄積され、不整脈を起こすようになり心臓の血管が締め付けられ、心不全で亡くなったと聞いている。
 単発のストレスではなく、慢性的なストレスが長期間続いたらしいが、そのストレスの原因は俺の母親だ。

 俺は後妻の子……玄野の愛人の子だ。

 正妻である貴政の母が死んですぐ母親の腹の中に俺がいることがわかり、玄野は母親を後妻として受け入れた。まだ幼かった貴政が実母の死に直面するには酷で、そこにすぐに新しい母親と言われても受け入れられるわけがなかった。まして新しく弟ができる……それを喜ぶはずもなく。

 貴政は同情と哀れみの対象になり周りの大人たちからのいろんな言葉に染められて生まれた弟とその義母に対して明らかな壁があった。

 ――貴政は長男だけど、格式的に婿入りするのか。

 俺は次男で、後妻とはいえ愛人の子供。玄野の父が俺を巳波の婿候補にすると思えないし、巳波の方も俺を迎え入れるわけがないだろう。

 巳波と玄野を繋ぐために、その一人娘のお目付け役に回された俺はひとつの仕事として素直に指示に従った。

 親戚の子と偽り、面接まで受けて入社試験まで受ける茶番に本音は白けていた。

 ――本当におままごとじゃないか。アホらしい。

 そこまで溺愛された娘は、さぞ我儘なお嬢様なんだろう……そう思っていたのに出会った彼女は真面目でとても常識的な感覚を持ち合わせた可愛い女の子だった。
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