箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
「君の補佐役です」

 そう言って自己紹介した俺にクリッとした大きな瞳で見上げてきて、その顔はとてもかわいい顔で。

 抜けるような白い肌は陶器のよう。触らなくても感じるほどツルッとした綺麗な肌は普段から丁寧にケアされた証拠だろう。それでも生まれ持った造形は文句なしに整っている、まるで人形のような容姿。

 ――これは心配だわなぁ……。

 無防備に微笑まれたらその辺の男は一瞬で勘違いして惚れてしまいそうだ。これはお嬢様というベールをしっかりまとわせるほうが逆に安心なのでは? 巳波財閥の一人娘となれば気後れして手も出せなくなりそうだが……そんなことをぼんやり思いつつ、その汚れを知らぬ大きな瞳は俺を真っ直ぐに見つめてくる。

「あの……」

 見つめながら口を開いた彼女は真剣な声でこう告げて頭を下げた。

「不束な者ですが、よろしくお願い致します」

 ――不束な者って……。

 どこまで本気で言っているのだろう。愛想にしては真面目で真っ直ぐすぎる。冗談……? にしてはあまり笑えない。笑えないのだけれど。

「こちらこそよろしく」

 思わず笑ってしまった。
 フッと和む空気に彼女もホッとしたのか、白い肌は桃色に染まってフワッと微笑む。その笑顔は破壊的に可愛かった。

 それから補佐役……という名のお目付け役としてフォローする日々が始まるのだが仕事をする彼女はとても謙虚で前向きで。とにかく出来ること、やるべきことをひとつずつメモにとるほど真面目に業務に取り組んでいた。
 それは片手間なお遊びにしては真剣で……パフォーマンスとも違う、本人から意志を感じる。仕事をしたい、覚えたい……そんな意欲的な気持ちを。

 ――結婚する身でなにをそんなに真剣に取り組む必要があるんだろうか?

 純粋に興味が湧いた。彼女、巳波佳乃という人物に。
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