箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
 アメニティ選定プロジェクト、その中には彼女の企画書も提出されていた。

 いつも通り丁寧にプレゼンされていて、目を付けたタオルもとてもいいと思った。希少なハーブを使ったバスオイルもセンスを感じる。特別感、おもてなし感……それは彼女が一番大事にしたいことだと知っていたからこそ、よく考えた企画なのだろうと。

 ただひとつ、引っかかるのはコスト面。これでは採算が取れない、アメニティのひとつとして起用するにはコスパが悪すぎる、この企画は案としてはいいけれどもビジネスとして成立しない。だから採用は無理だと、それを杉山さんに意見したら渋い顔をされた。

「いや、上に確認してからにしようか」

「え? 上とは?」

「上は上だよ。この企画は通させた方が良くない?」

「でも原価率が……」

「そこは君の交渉術じゃない?」

 上に相談……それは俺の父親に確認を取れと言うことか。通させた方が良い、その言葉からこの案件は彼女の仕事がまるで遊びのような扱いを受けているとわかる。そして現実、そうなのだ。

「特別助成金として計上させればいい、巳波財閥からの支援金だ」

 父親に確認を取りに行けば数日後にそう返された。

 普通ならこの企画は通せるものではない。きちんと理由を述べて納得させられる理由がある。市場価格をきちんと調べ直して間違いを認め、見直させるべきだ。そこから改めて考え直せるチャンスでもある。それが経験になり、成長にも繋がるのに。

 ――その機会さえ与えてやらないつもりか。

 そしてそれになにと言えず従う俺に……何が言えるのか。言われるままにその企画は通されることになり、規格外の見積もりと共に彼女の案は採用される。

 その時に気づいた。
 これがひとつのターニングポイントになるのではと。彼女の企画が通る……それは、彼女の仕事の結果がひとつ出るということだ。つまり――。

「お嬢様の遊びの時間は終わりだ」

 父親の言葉に息の仕方を忘れそうになった。
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