箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
 この企画を通したら彼女は喜ぶだろう。

 やりたかった仕事、ひとつの成果……一生懸命仕事に向き合ってきた彼女にとっては朗報で、嬉しい結果だ。

「良かったな、通ったよ」そう言ってやりたい。心から……でも。

 ――言えるかよ。

 なんと言えばいいんだ。俺の口から言ってやれる言葉がない。

 悶々して、意識的に彼女を避けてしまっていた。あの澄んだ瞳に真っ直ぐ見つめられるのが怖くて、真実を隠す俺をあの純粋な瞳が見つめると思ったら怖くて……。

 そう思っていたのに、声をかけてしまった。

 朝焼けの中、儚げな一輪の花のように佇んでいた彼女の顔は、痛々しく浮腫んでいた。そんな顔を目にして声をかけられないわけがない。

「どうした? なんかあった?」

 よくそんな言葉が出たもんだと自分でも呆れてくる。心当たりがひとつもないわけではないのに、でもこのときは本当に気づかなかった。その悲しげな顔を見たら、悶々としていた悩みや思いなんか吹き飛ぶほど、目の前の彼女が心配になったのだ。

 どうした、何があった……なぜ泣きそうな顔で、俺を見つめてくるんだ。
 
 ――そんな瞳で見つめられたら……。
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