箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
重厚なドアが閉まると、都会の喧騒が嘘のように消えた。隣に座る巳波社長からは、威圧感というよりは、すべてを透かして見るような静かな知性が漂っている。
「お忙しいなかお時間ありがとうございます」
「君が書いた業務報告書には、目を通している。非常に理性的で、現場の機微を捉えた良い資料だった。佳乃の面倒もよく見てくれたようだな。一度お礼がしたいと思っていた」
「……とんでもありません。僕は最後まで彼女に寄り添ってやることはできませんでしたから」
そう返すと巳波社長は何も言わない。前を見据えたままの社長に思い切って問いかける。
「退職は彼女の意志ですか?」
「それを聞いてどうする」
「彼女が望んだことですか? 今回のことを……彼女は納得したうえで決断していますか!?」
車内で声を荒げたらバックミラー越しで秘書と目が合った。それでなんとか感情を抑えようと冷静にもなるのだが、込み上げるものがある。
「彼女は……とても真面目に仕事に取り組んでいました。ほかのどの社員よりも、プロジェクトのことだけじゃない、会社のために自分の出来ることをと。それは今まで彼女が培ってきた知識や感性もフルに使って。巳波社長だってそんな経験をさせたくて彼女を働かせたのではなかったんですか!? 学ばせようとしたのではなかったんですか!」
張り詰めた沈黙が車内を支配した。巳波社長は怒る様子もなく、ただ静かに、俺の顔をじっと見つめた。その瞳の奥には、どこか懐かしむような、あるいは俺を試すような光が宿っている。
「あの子のために、私にそこまで食って掛かるとはな。でも、君もわかるだろう? この世界に住む以上、自分の気持ちだけではどうにもならないことがあることくらい」
「……」
「佳乃はちゃんと理解している」
「理解していても、納得できるとはまた別です」
それは俺自身が一番わかっているから。
「僕は……彼女を傷つけました。いろんなことを黙ってそれが彼女のためだと……でも今はそんな風には思えない、思えなくなった」
『だから私はもう、いいんです』
あの時の言葉が忘れられない。
「もういいなんて……二度と言わせたくない。あんな悲しそうな顔をさせて、そんな言葉を言わせたくありません」
「君に何が出来る」
その言葉に奥歯を噛みしめて顔を上げた。
「お忙しいなかお時間ありがとうございます」
「君が書いた業務報告書には、目を通している。非常に理性的で、現場の機微を捉えた良い資料だった。佳乃の面倒もよく見てくれたようだな。一度お礼がしたいと思っていた」
「……とんでもありません。僕は最後まで彼女に寄り添ってやることはできませんでしたから」
そう返すと巳波社長は何も言わない。前を見据えたままの社長に思い切って問いかける。
「退職は彼女の意志ですか?」
「それを聞いてどうする」
「彼女が望んだことですか? 今回のことを……彼女は納得したうえで決断していますか!?」
車内で声を荒げたらバックミラー越しで秘書と目が合った。それでなんとか感情を抑えようと冷静にもなるのだが、込み上げるものがある。
「彼女は……とても真面目に仕事に取り組んでいました。ほかのどの社員よりも、プロジェクトのことだけじゃない、会社のために自分の出来ることをと。それは今まで彼女が培ってきた知識や感性もフルに使って。巳波社長だってそんな経験をさせたくて彼女を働かせたのではなかったんですか!? 学ばせようとしたのではなかったんですか!」
張り詰めた沈黙が車内を支配した。巳波社長は怒る様子もなく、ただ静かに、俺の顔をじっと見つめた。その瞳の奥には、どこか懐かしむような、あるいは俺を試すような光が宿っている。
「あの子のために、私にそこまで食って掛かるとはな。でも、君もわかるだろう? この世界に住む以上、自分の気持ちだけではどうにもならないことがあることくらい」
「……」
「佳乃はちゃんと理解している」
「理解していても、納得できるとはまた別です」
それは俺自身が一番わかっているから。
「僕は……彼女を傷つけました。いろんなことを黙ってそれが彼女のためだと……でも今はそんな風には思えない、思えなくなった」
『だから私はもう、いいんです』
あの時の言葉が忘れられない。
「もういいなんて……二度と言わせたくない。あんな悲しそうな顔をさせて、そんな言葉を言わせたくありません」
「君に何が出来る」
その言葉に奥歯を噛みしめて顔を上げた。