箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
 巳波社長の瞳から目を逸らさしたりしない。俺は思う気持ちを社長に向かって投げつけた。
 
「兄に婿入りさせれば、いずれ玄野に飲み込まれる。父も兄もその野心しか持っていない。それは社長も分かっていますよね? 本来なら嫡男である貴政が婿入りが筋だ、それも分かっています。次男の僕にその権利はない。釣り合わないのもわかっています、でも僕なら玄野の内情を熟知した上で巳波財閥の盾になれる。巳波の人間として、あなたの娘を守り、あなたの築き上げたこの会社を、玄野の野心から守ってみせます」
 
 これはもうただの願いではない。自らの血筋を売ってでも彼女を手に入れるという、最も不遜で、最も誠実な裏切りだ。

「僕を選んでもらえませんか。兄ではなく、僕を……佳乃さんの相手として見合いの席に立たせてください。佳乃さんを二度と泣かせないと、必ず約束します」
 
 車内が、再び静寂に包まれる。緊張感の漂う空気の中、吐き出す俺の息さえも震えているようで……それでもここで引けない。たとえやり方が正攻法でないと言われても、そうまでしても手にしたいものだと。諦めたくないこの気持ちだけは伝えたい。

「佳乃さんが好きです。貴政なんかに渡したくない……俺が……彼女を幸せにしたい……!」

 いろんな理屈や理論を並べても本音はこれしかない。これが俺の全てだ。心の奥で芽生える嫉妬。貴政だけじゃない、誰にも渡したくなんかない。

「お願いします。僕に佳乃さんと結婚する権利をください」
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