箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
 心の中で「お願い……!」そう願うように叫んだら、パパは大きなため息を吐いた。

「……社会勉強は、悪いことではない」

「あなたっ!」

「佳乃は、もう働きたい場所を見つけているのか?」

「……う、うん! 何社か考えてるところがある……!」

 私は慌てて席を立って自室まで戻り、候補の会社パンフレットを持ってパパのもとへと戻る。差し出したそれらを静かに手に取るパパは眉間にしわを寄せつつも食い入るように見つめている。

「佳乃……あなた本気なの? 本気で働こうと思っているの?」

 ママの不安そうな声に首を縦に振る。

「本気よ。私、もっといろんなこと知りたいの。この家で学ぶことだけじゃなくて、もっといろんな人といろんな経験がしたいの」

「それはなにも就職しなくてもできることじゃない? 出会いたい人や興味のあることならママが探してきてあげるじゃない。今までもそうして……」

 ママの言葉に頭を振る。それにママは切なげな表情を浮かべた。

「ママ、違うの。そうじゃないの。私が決めたいの。やってみたいって思うことを自分で決めてみたいの……だってもう23歳なのよ? 自分の力だけでどれだけのことができるか試したい、それは我儘なこと!?」

「ママは23歳の時はもうお嫁にきていたわ」

「……」

「ママはもうあなたの今の歳ではパパと結婚することが決まっていたの。あなただってそれでもいいのよ、でもまだ相手が決められていないからそうならないだけなの」

 ママの凛とした声に息を呑むしかできない。でも私だって、今日だけは引き下がれない。

「最適で最高の相手と結婚する、佳乃はそのためにいろんな時間を過ごしてきたでしょう? それこそ()()()()()()()()()()を」
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