箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
 ――本気で? 玄野さんは本気でそんなことを……?

「もう嘘つきたくない。佳乃にさ、あんな言葉言わせたくないんだ」

「あんな、言葉……?」

「最後俺に言っただろ? もういいって、勘違いしたくないって。そんな風に自分を責めて諦めさせたくないんだよ」

「……っ」

「佳乃に近づいたのは確かに俺の意志じゃない、立場的なことが理由で接触してた。だから言い訳できなかった。でも、佳乃の仕事に対しての一生懸命頑張る姿に惹かれたのは事実で、そこから目で追うようになった。一緒に過ごしたらダメだよ、いろんなこと可愛いからさ」

 フッと思い出すように笑うその顔に、涙が止まった。その笑顔は、私の大好きな笑顔だから。

「バスでもあんなにはしゃいでさ、ラーメン食いたいって……そんなことで喜んで」

「だって……なかったから」

「うん。それだけのことが言えずに過ごしてきたんだな」

「……っ」

「そんなことが言えなかったのかって、それ知ったらさ、もう可愛いを超える」

 可愛いを超える、それはどういう意味だろう。その言葉の先を知りたくて玄野さんの腕もキュッと掴んでしまった。

「それは、どういうことですか?」

「……」

「いい意味ですか?」

「そういうところがもう可愛いんだよな」

 ――え?

 玄野さんの手が頬から耳を塞いでそのまま首筋を包み込む。熱い手が髪の毛を掻き分けるように首裏を掴んでグッと引き寄せられた。

「あ……」

「もうそういう無防備なとこ、誰にも見せちゃだめだよ?」

「玄野さ……」

「名前で呼んで」

「……」

「貴政じゃない、俺をって……俺とって言って」

「私……」

 私は、私が言葉にしていいことなの? 
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