箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
 ホテルのラウンジ、大きなガラス窓の外は綺麗な田園風景が映し出され、暖かな手に指先を絡めながら包まれていると、今いる世界は夢のような気持ちになる。

 手を繋いで柊也さんの肩に身を預けてうっとりした気持ちで景色を眺めていたら柊也さんの声がポツリとこぼれ落ちてくる。

「ちょっと……離れられる?」

「え」

 降ってきた声に顔をあげたら少しだけ困った表情で見下ろされる。距離が近い。ピタリと身体を寄せる私は柊也さんと見つめ合うけれど、どう見ても近い。

「このままゆっくりできたらいいんだけど……ご両親も待ってるしね」

「……」

「お見合い、忘れてる?」

 ――忘れてた。

「あまり遅くなると心配させるからね。そろそろ行こうか」

 ポンッと頭を撫でられて、温かな手が優しく髪に触れてくる。その行為に胸がドキドキ高鳴ってキュンと締めつけられる。そして思う気持ち……。

 ――もう少し、このままでいたかったな。

 撫でられる頭を少し垂れて俯く私の気持ちを察したのか。プッと噴き出して両手で頬を包まれたら顔をあげさせられる。

 ジッと見つめられると照れる。でも目を逸らすなんてできない。私も見つめてくれる瞳を見つめ返すと優しげな瞳はゆるく弧を描いて微笑んでくれる。

「すぐにふたりきりになれるよ」

「え……」

「ふたりきりにしてもらうし」

 少しいたずらっ子みたいな顔でそんな風にこぼしてくれた。ふたりになりたいと、柊也さんも望んでくれているのか、それを感じたら頬がカァッと熱くなった。

「これからずっと一緒にいられるよ」

「……」

「ずっと一緒にいさせて」

 そんな言葉を言ってもらえるなんて思ってなかった。

「ふ……」

「ふ?」

「不束者ですが、よろしくお願いします」

「……」

 そう頭を下げたら笑われて、ぎゅっと抱きしめられる。

「そのセリフをこんな形でまた聞けるなんてな」

「え?」

「こちらこそ、よろしくお願いします」
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