箱入り令嬢ですが恋がしたいのです〜選ばれなかった御曹司に溺愛されて結婚します〜
 月日は巡る、あっという間に。

 ほぼ形式だけのお見合いはとても円満にかつ円滑に進んで柊也さんの巳波への婿入りがスルスルと進んでいく。

 職場で柊也さんに支えてもらって好きになった人……そんな人と結婚できるなんて幸せ、パパに心からのお礼を言ったらパパがすぐに入籍をしろと言い、柊也さんを家に迎え入れてしまった。

「なんか……ごめんなさい。柊也さんの都合もあるのに」

「構わないよ。佳乃と一緒にいれるほうが俺も嬉しいし」

 でも……。
 そう言ってくれるのは嬉しいし嘘には聞こえないけれど、柊也さんには柊也さんの暮らしや思いがあるはずだろう、そう思ったけれど。

「俺はさ、家には居場所がなかったからさ」

「……」

「どこに身を置いても肩身が狭くて、不躾な視線も浴びてきてる。玄野の家には俺はどこか腫れ物みたいな扱いもあるから」

 そんな風に言わせたかったわけじゃない。自虐的なその評価にわかりやすく表情を歪めてしまったら柊也さんは気にした感じもなく軽い口調で笑う。

「巳波の家が受け入れてくれて嬉しいよ。佳乃が望むことに応えられるならそれ以上に嬉しいことなんかないしね」

「我儘……」

「だから我儘じゃないし。それに言っていいんだよ。俺は佳乃の我儘に応えてやりたい」

 頬にソッと添えられる優しい手のひら。その熱に寄り添うように身を預けたら柊也さんの顔がゆっくりと近づいてくる。

 ――あ……これは……。

 ドキドキと、その次に起こりそうなことを想像して胸が高鳴る。ドキドキバクバク……だって、このままキスされる……! そう思って目を瞑ったら、チュッと落とされたキス。

「……」

 目をゆっくり開けて、ジッと柊也さんを見つめるもののくしゃっと笑われるだけ。
 ソッと、触れられた額に指先を添えると毛先を弄ばれる。その毛先にもチュッとキスを落とす柊也さん。

「もうちょっとね」

「……もうちょっと?」

「仕事、行ってくる」

 子供みたいにオウム返ししても困ったように笑われて、そのまま柊也さんは仕事に行ってしまった。
 籍を入れて一緒に暮らしている……はずなのに。私と柊也さんは……プラトニックな関係のままなのだ。
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