Bella Notte
「これでも楓ちゃんよりは長く生きてるし、色んな経験はしてきたつもりだよ」
 そう言って微笑む健人くんが涙でボヤけて良く見えなくなる。

 パチパチと薪が燃える音が耳に心地よくて。

 涙が頬を伝っていると気づいたのは、健人くんが優しくそれを拭ってくれたから。

「1人で抱え込んで、辛かったね」

 そう言って、同じように悲しそうな顔をしてくれた。
 健人君は、いつもそうやってつかず離れずの距離からそっと見守ってくれている。

「健人君、ありがとうでも、本当にもう大丈夫だから」
 そう言うと、ふるふると頭を振った。
「家族なんだから、いつでも頼ってね」
 優しく抱きしめてくれると爽やかなマリンノートの香りに包まれ、安心できて。

「辛かったら、いつでも帰っておいで」
 そう言って優しく微笑んでくれる。

 それから、しばらくは他愛もない話をしていた気がする。

「最近よくサロンに可愛い猫がくる」
 とか。
「フライト中は、眠くなると隠し持っているツボ押しで手のツボを押して眠気を覚ましてる」
 とか。
「町におしゃれなパンケーキカフェができて、サロンのお客さんに誘われて行ってみたら、作る方にハマってしまった」
 なんて。

 ふと健人君が真剣な表情で。
「……桜井君の事、やっぱり幼なじみとしてしか見れない?」
 そう聞いてくる。

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