Bella Notte
 そう言えば、朝メッセージを送った後スマホを放置していた事に気づく。
 桜井は、なんて返事くれたんだろう。

「本当に、分からない。でも桜井が傍にいなくなるって考えると、こう、足元がぐらつくような不安があって」
 まるで自分が何も知らない幼い少女のような錯覚をする。
 
「もっと、桜井の色んな所を知りたいって。ほかの女の人と笑い合うのを見ると何だか心がざわっとして。それをアイツに伝えるとしたらどんな言葉になるんだろうって、ずっと考えてる。」

 そう言って見つめると健人君がふ、と柔らかく微笑んでくれた。
「楓ちゃん、ごめんね。俺は楓ちゃん限定でお節介だから……」
 そして視線をふと私の後ろにやって頷いている。
 その視線を追って振り向く。

「……楓」
 少しだけ息を切らした、少しだけ怒ったような桜井がそこにいる。

「桜井君、良かったらここに座って」
 聞いている人が心地よい穏やかな声で健人君がそう言って席を立ち、何故か用意してあったもう一客のカップを取り出した。
 
 焚火から下ろしてある丁度良い温度のお湯を、新しいポットに注いで紅茶を淹れ始める。

「楓ちゃん、しばらくたったら淹れてあげてね。桜井君ごゆっくり」
 そう言ってそそくさとデッキから消えてしまった。

 潮騒の音がかすかに聞こえてくる。
 それから今朝の色々まで鮮明に思い出してしまい、顔に熱が集まり。

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