Bella Notte
 落ち着かない沈黙の時間がとてつもなく長く感じながら、必死に焚き火を見つめるふりをする。
 やっと紅茶の飲み頃だとカップへ静かに注ぎ終わるタイミング。

「……もう東京へ帰ったのかと思った」
 そう言う桜井をうっかり見てしまうと、視線が今までとは違って、とても甘い。

「ごめんね、ずっと傍にいてくれたから感覚が分からなくなってたけど。そう言えば、ゴシップ狙われるくらいマスコミに追い回されてるって思い出して」

 いたたまれなくなってチェアの上で膝を抱えてブランケットに包まった。
「これ以上、迷惑はかけられないなって」

 そう言うと桜井は本当に楽しそうに笑った。
「……何かそう言うのが楓らしくて、好きだ」
 また、さりげないタイミングで告白してくる。
 高鳴る心臓がうるさくて、吐息が震えた。

「ねぇ、桜井。いつから……いつから、私を」

 それは、消え入りそうな声で桜井に伝わったのか分からない。

 おずおずと視線をやろうとするといきなり伸びて来た大きな手に引き寄せられて、なすがまま桜井の力強い腕の中に囚われる。
 微かにフゼアが香った。


「……本当に聞きたい?」
 腰に響くいい声でそう囁かれたので答えの代わりに、小さくうなづく。
「いつからか分からないくらいはずっと好きだよ」

 そう言って穏やかに微笑むその仕草が、大人の色香満載。

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