Bella Notte
 ―――― そうだ、楓を人として本当に好きだって思ったのが小学4年生の夏。
 その頃は恋なんて分からなくて。

「ゆうちゃーん、今日もカワイイねぇ」

 わざとらしい裏声でそう言ってニヤニヤ笑うクラスメイトの西田。

 小さくて、力が弱くて。
 その上女の子と間違えられるオレの容姿。

 からかって、イジメる標的にされるのはいつもの事。
 ここで反論して喚くなんてしたら、さらにヤラレるのは分かってるから、俯いて黙ってやり過ごす。

「おい、無視かよ」

 そう言って体の大きい鍋島が、Tシャツの首元を掴み上げてくる。

 無言でその手から何とか逃れて。
 それでも執拗に体当たりをしてくる鍋島。
 体格差が大きすぎて、公園の砂場へランドセルごとダイブする……。

「いつも岡山に構ってもらって、ムカつくんだよっ」

 その瞬間。

「ちょっと、止めてよ!」
 その大きな声のする方にその場の全員が目をやる。
 顔を真っ赤にして、息を切らしている楓が腰に手を当てて立っている。

「うわ、でたよ」

 そう言ってやや引きつりながら鍋島が呟く。

 楓の華麗なる平手打ちが鍋島の頬にヒットしたのはつい先日の事。
 黙っていれば美少女で、運動神経は抜群その上勉強も出来る。
 となれば、自然とクラス内のカーストではトップに位置するわけで。

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