Bella Notte
 何て今さらすぎるガキ丸出しのセリフを呟く。
「え、それは無理かも」
 サラッと流された。

 さっき、健人さんから楓の傍にいてやってと、メッセージをもらう。
 それがなければ、今ここには居なかった。
 感謝していいはずなのに、やきもちって。
 大人になっても変わらず情けない自分をこれが拗らせなのかと思いながら。

「でも、桜井だって抱きしめるし……それからそれ以上も……」
 そう言って何かを思い出した様に楓は真っ赤になって固まる。

「そうだよ、だって楓が可愛くて大好きだから」
 すかさずそう言えば、もうこちらを見てくれなくなった。
 やりすぎたかと一旦腕の中から解放すると、楓はそそくさと自分の椅子に戻る。

「もう、それは分かったから、これ以上、心臓が持たないから」
 そう言って恨めしそうにこちらを見たかと思うと。
「しばらく、好きっていうの禁止ね」
 そう言って真っすぐ前を向いてしまう。

 長い髪を弄んでいる華奢な手を掬い取って手の甲に優しく口付ければ、驚いてこちらを見てくれる楓。

「楓、今はこれで我慢するから安心して」
 そう言って微笑むと、真っ赤な顔に潤んだ瞳。
 正直本能を刺激する密着具合は避けたい状況だ。

 今だって場所も構わず楓を自分のものにしてしまいたい情動を抑えるのに必死で。

 飲み頃を逃した紅茶を慌てて飲み干した。

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