Bella Notte
「うん、だから、一緒に食事へ行こうかと思って、さっきクルーの方に楓先輩の連絡先聞いたんだけど」
 いや、だからとどこから突っ込めばいいと考えていると。

「サプライズもいいかなって」
 捨てられた子犬のような目で見てくるので仕方なく。
「分かったよ、行きつけのカフェでいいかな」
 折れることにした。

 お店まで地下鉄で行こうとするとすかさず藤ちゃんがタクシーを捕まえてくれた。
「混んでるし危ないから、タクシーで行こう」
 とか言い出すし。

 パリの街は何度も来ているし、危険ポイントは心得ているつもり。
 そんな姫扱いしなくても大丈夫と言う間もなくあっという間にタクシーへ押し込められた。

「S'il vous plaît, emmenez-moi au Café Berry.」
 カフェベリーへ行く様に運転手へ伝えれば、藤ちゃんは隣で流暢なフランス語を話す私を見つめた。
 
「先輩、フランス語もとても上手です」
 とか感心したように言ってきた。

「簡単な日常会話程度だよ」
 と返せば。
「俺もまだまだだなぁ……」
 と遠い目をし始めた。

(そんな、藤ちゃんはあの競争率を勝ち抜いて副操縦士にまでなったのに)
「何言ってんの、藤ちゃんだって立派になって」
 そう言っていつもみたいに笑えば、目を輝かせている。

「やっぱ楓先輩にはそう呼ばれたいです」
 すぐ無茶振りしてくる。
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