Bella Notte
「いや、仕事中や会社の人の前では無理でしょ」
 バッサリ言うと少し落ち込み始めた。

 やれやれと、話題を変えることにする。

「藤ちゃんはいつからパイロット目指してたの?」
 確か中学生の頃は、医者を目指すのだと生徒会室で仕事が終わるとすぐに猛勉強していたな、と思い出しながら。

「高校卒業する前当たりですかね」
(本当は、楓先輩がCA目指してるって聞いてからだけど)

「俺、本当に英語が苦手で。それでもどうしても諦められなくて」
 そう言って笑う藤ちゃんは、中学時代の笑顔の面影があった。

「頑張ったんだね。藤ちゃん、えらいね」
 思わずあの頃の様に、頭をクシャクシャにするように撫でてみれば、少しむくれた様子で軽く睨まれる。

「何かその扱い、嫌だな」
 そう言ってそっぽを向かれてしまった。
(そうだよね、もう大人なんだし)

 申し訳なさそうに言葉の続きを待っていると、こちらを向く藤ちゃんの瞳はなぜか熱がちらついていて。
「もう、弟役は卒業したい」
 逃げ場のない狭い車内で、見つめあう。

 運転手の着いたよ、の一言でハッと現実に引き戻された。

 支払いを済ませ「merci」と言ってタクシーから降りると、目の前にはカフェがあってちょうどテラス席へいる店員へ2人だと伝えて、テーブルへ。

 一通りオーダーを済ませた。
 パリの街並みを眺めながら、思わずため息が1つ出る。
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