Bella Notte
(さっきの雰囲気はなんか、気まずいな)

「今回の初フライトどうだった?」
 そういえば、機内でそう言っていたのをふと思い出して聞いてみる。

 すると藤ちゃんの表情が少しだけ曇った。
「ごめんね、オフの時には話したくないよね」
 あわてて話題を変えようとした。

「すごく、緊張したしまだまだだなって自分の未熟さを痛感しました」
 そう言ってしょんぼりする姿は、なんだか大型犬がうなだれているのを連想させる。

「だけど、楓先輩と一緒に飛ぶことができて、すごく嬉しかったんです」
 心をくすぐられる、『かわいい』という思いと頭を撫でたい衝動を抑えた。

「そうなんだ、そう思ってくれて嬉しいな。驚いたけど藤ちゃんと一緒に働けて私も嬉しいよ」
 そう言って笑うと藤ちゃんが口元を抑えて、そっぽを向いてしまう。

 若干耳が赤くなっているのを見ると照れているのかと思い至った。

(いや、楓先輩、やっぱ大好き、この一言の為に頑張ってきたんだから)
「あの、」
 言いかけたタイミングでウエイターが香ばしい香りのソテーした豆とチキンのサラダ、クロワッサン、フルーツチーズを持ってくる。

「お腹ペコペコなの、藤ちゃん食べよう」
 タイミングを思い切り外されて、どうぞとフォークを手渡されて頷くしかなく。

 お腹を満たした後、エスプレッソをゆっくりと飲みながら、ステイ中の予定をお互いに話した。

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