Bella Notte
「楓先輩って、騙されやすいから心配だなぁ」
 もう、可愛いが似合う爽やか後輩はどこにもいない。

(昔から……好き?)
 混乱しつつ、この状況は非常に危ないと脱出の機会を伺う。

「ここで俺に抱かれちゃっても、怒らないで下さいね……」
(抱かれっ……)
 カッと頬が染まり、自分の甘さに涙が出るほど悔しくなる。

 涙目で俯いていると。
「あぁ、その表情たまらないなぁ」
 そう言って顎に手を添えて優しくキスしてくる。

 フイ、と横を向いてそれをかわすとクスッと微笑まれる。
 ダメだ完全にスイッチが入ってる。
「好き、楓先輩」

 その言葉に藤ちゃんを見上げると、真剣な表情がそこにある。

「桜井センパイより俺を選んで」
 そう言って今度は逃れられないキスを……。

 苦しさと無有を言わせない力強さに、抗えない自分が悔しい。
 思わず涙が溢れる。

「好き……大好き……」
 甘く囁かれても、何も感じない。
 それよりも。

「やめて、離して」
 ふと彼の力が緩んだタイミングで思い切り突き放して冷たい声で抗議した。

 桜井にキスされた時とは違う。
 そう考えてしまう自分も嫌だけれど、こればかりはしょうがない。

「私、桜井が好きなの」
 このタイミングで気づくなんて。

「そう気づいたから、藤ちゃんの気持ちには応えられないよ。ごめんね」
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