Bella Notte
「……メッセージを送って済ませてもよかったのですが、その……」
 続きを待つけれどいつまでもそれは訪れず。
「どうしても直接伝えたくて。岡山さん、何か困ったことがあったらいつでもご相談ください」

 初めて会った時のような冷たい声ではなく、人間らしい気遣いのある言葉に涙が溢れる。

「・・・・・・わざわざありがとうございました失礼します」
 泣いていることを知られなくなくて、そそくさと電話を切る。

 しばらく夜空を仰いでため息をつく。
(とにかく、家に帰ろう)

 当たりを見回すと、自宅マンションが目に付いた。
 一歩踏み出したところで大きな手に肩を捕まれる。
(まさか、ここまで追いかけてきたの?)

「離して、藤ちゃん……」
 そう言いながら振り返ると、息を切らした桜井がそこにいる。

 深くフードを被り少し不機嫌そうに眉をひそめて見つめられると言葉の続きがでてこない。
(やばい、違った)
「何、アイツと何かあったの」

 素早く辺りに視線を走らせれば、マスコミ関係者はいないようで思わずため息をついてしまう。

 それを詮索されたのを煩わしいと勘違いしたらしく、少しだけ落ち込んだ様子で肩の手を放してくれる。

「違う。そうじゃなくて」
 上手く言葉が出てこない。
 桜井を目の前にすると心が締め付けられて苦しいのに、甘くて切ない気持ちも相まって瞳が潤む程鼓動が高鳴る。

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