Bella Notte
 「君がそう言うなら、まずは受け止めるべきだな。人の道は、それぞれだ。特にモデルなんて、立ち続ける場所を選ぶ力がなければ続かない」

 言葉は穏やかなのに、その奥に情熱と見えない揺れが確かにある。

 「ただな、桜井。君はやり切ったと感じているか? それとも誰かのために辞めたい、のか?」

 桜井は少し沈黙し真っすぐに見つめ、ふとやわらかな笑みを浮かべる。

 「……彼女の存在で、自分の軸が揺れ始めたのは事実です。でも、それは彼女のせいではなく、何を大切にすべきか分かったからです」

 朝倉はゆっくりと頷く。

 「君が選ぶなら、それも君の美しさだ。だがな……」

 彼は窓辺に立ち、言葉を続けた。

 「いつか彼女が君にどうして辞めたのかと問われた時、 君はそれに応えられるだけの『選択』をしたと胸を張れるか? それだけは、よく考えておきなさい」


 静かに、でも確かにその言葉は桜井の胸に深く響いていた。


 

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