Bella Notte
 なぜか涙が出そうになってそう言って笑うのが精いっぱいだった。

 事務所に入ってしばらくは、下積みだと会うたびに疲れていた。
 それなのに『やるからにはちゃんとやりたい』って、いつもの軽口の裏で本気なのが伝わってきて。

 会うたびにだんだんと洗練されていく桜井が纏う空気が、ふとした瞬間に変わっていく。
 どんどん遠くなる気がして、少しだけ寂しいとは言えなかった。

 それから1年と少し経った頃。
『雑誌に写真が載る』
 って相変わらずそっけないメールが来たと思ったら。
『楓へ1番に見せたかったから発売前だけど自宅のポストに入れといた』
 なんて意味わからない言葉で終わってた。

(一緒に見なくていいのだろうか……?)
 
 でもその雑誌を開いた瞬間、見開き1ページ。
 
 一面のブルーとこちらを真剣な表情で見据える桜井。
 
 気が付くと涙が溢れてくる。

 どんな時も努力していた、それを側で見ていたから。
 桜井には言えなかったけど、雑誌が発売されてから10冊も買ってしまった。
 レジの店員に変な顔されたけど、そんなの気にならないくらい嬉しくて。

 『桜井、雑誌見たよ。おめでとう』

 そうメールを送ったけど、本当はいっぱい言いたかった。
 頑張ったね、よかったね、すごくカッコいいよって。
 桜井はあの頃から何も変わらない、頑張り屋さんだよって。

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