Bella Notte
 ドアが閉まった瞬間、もう2度と逢えないかもしれないと心の痛みに涙が溢れた。

 ホテルの外に出た途端、夜風が頬を撫で12月の空気が、泣いた後の熱をそっと冷ましていく。

 きっと、今ごろ桜井の心も同じ冷たさに触れている……。
 今にも彼の元へ引き返しそうになりながら、必死で前を向こうと町の輝きを眺めては、吐く息が白くなる季節に1人震えた。

 『上層部と協議した結果、騒動が収まるまで休暇をとってもらえないだろうかと打診があって。岡山さんを守るためでもあるから』
(仕方ないよね、会社やお客様へ迷惑をかけるのは目に見えてるし)

 上司から電話を貰ったのが今週初めの月曜日。
 今は自宅で一人、ベッドの上で天井を見上げている。
 あれから桜井からの連絡は全くない、それが長年続けてきた2人の関係の終わりを告げているようで心を軋ませる。

(どうしよう、このまま今の会社で働き続けるのも……)

 ふとスマートフォンが鳴り、メッセージが来たと知らせる。
 通知欄には『ハル』の文字が。
 文乃と3人のトークルームをタップした。

 『さっき日本へ帰国したよ。突然だけど、結婚式は2週間後なんだ。その前に一度3人で会えない?』

(嬉しい誘いだけど、今の時期大丈夫かな?)
 
 地元の同級生や同じ学校だった他学年から、桜井との事がもれ出しているらしく。
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