Bella Notte
 重厚感溢れるエントランスは、上質なホテルを連想させる。
 コンシェルジュデスクがあって、取次なしでは中へ入れない。

 その上最新の顔認証セキュリティーも張り巡らされていて。
 安心安全は確保されるけど、いつも監視されているみたいで窮屈だと文乃は不満げだった。

 文乃の勤める製薬研究所はトップシークレット扱いで、会社は手厚い待遇とセキュリティーで人材と研究を守っているらしい。

「楓!」
 懐かしいハルの声が響いてきて、笑顔で思わず振り返る。
「ハル!久しぶり……」
 そこには、洗練された大人の女性がいる。
 短く切られたショートヘアは明るい色に染められて。
 耳元には控えめなピアスが輝きを放っている。

 それでも、笑顔だけはあの頃のまま。
「会いたかったよ」
 そう言って優しいハグをする。
「ハル、結婚おめでとう」

 そこへ文乃がやってきた。
 「ハル、お帰り」
 そう言ってほほ笑んでいて。

 あの頃に一気に時間が巻き戻る不思議な感覚を覚えながら。

 「それじゃ、ハル。結婚おめでとう!」
 本日は奮発してシャンパンで乾杯。
 一気に飲み干したいところだけど、我慢しつつ。

 するとそれを見たハルが。
 「楓、大人になったね。大学の頃は飲み方間違えて大変だったのにね」
 なんて言い出すから、思い出したくない黒歴史を久しぶりに思い出す。
 
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