Bella Notte
 「楓、1回しか言わないからよく聞いて。楓の選択は正しいのかもしれない。だけどそれで本当に幸せなの?」

 そう言って感傷的に見つめてくる。
(分からない、だけど今桜井の側にいるのは違うと思う)
 「心配かけてごめん。こうやって遠くからそっと想うのも1つの形なのかなって」
(本当は今すぐ会いに行きたい)

 ふと文乃の瞳が緩んで。
 それ以上は何も言わないでくれた。

 ―――― 転職活動は、中々大変で。
 それでも、夢の海外生活の為諦めないと奮い立たせている毎日が過ぎていく。

 相変わらず桜井はSNSそれからメディア露出が多くて、知らない間に視界へ映り込んでくる。
 (本当はこんなに遠いところにいるんだよね)
 それはずっと気づかないふりしていた2人の距離。

 (今さら気づくなんて)

 エスプレッソマシーンの前でため息をついて、出来上がったコーヒーを1口飲む。
 今日は、ハルの結婚式。
 (すごく楽しみ)
 午後15時からの開始だから、都内で支度を整えた後電車で向かう予定。
 ふとスマートフォンの通知音が響く。

 メッセージアプリを開くと、文乃から。
『ごめん、現地で会おう』
(忙しいって言ってたもんね)

 ヘアサロンの予約に間に合わないので、手早く身支度を整えてメイクを施す。
 その簡単なルーティンが新鮮に思えるほど家に篭りきりだったのだとこの1週間を振り返りつつ。
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