Bella Notte
 鏡の前でメイクを落としながらふと昨夜のシーンが頭をよぎる。

 『愛してる……』

 そう言って大切に抱きしめてくれた。
 思い出すだけで、恥ずかしさと嬉しさと愛しさが溢れてくる。

(素直になっていいんだって思えたのは、優斗が諦めずに追いかけてくれたから)
 そっと胸元へ手のひらを置いて、瞳を閉じる。

(私もたくさん伝えていきたい、好きなんだって)
 真っ直ぐに鏡を見つめながら頷いた。

 ベッドルームに戻ると、起きたばかりの優斗がベッドの上で額に指先を添えて考え込んでいる。

 カタ、とベッドのサイドテーブルへミネラルウォーターを置けばこちらを見てくれて。

 少しだけ安心したように瞳を緩めてくれる。
(何か不安なのかな?)
 そう思ったので微笑んで。

 大きな手が伸びてきて、あっという間に包まれる。
 「……また、夢かと思った」
 優斗のか細い声が聞こえてくる。

 「何でそう思うの?」
 その様子に胸を締め付けられながら聞くと。
 「目が覚めたら居なかったから」
 子供みたいな答えが返ってきて。

 「優斗……私は優斗が好きだよ。夢なんかじゃない」
 そう言うと少しだけ優斗の瞳が潤んだように思える。
 「そっか……そうなんだ……」
 泣いているようなその声がたまらなくて思わず自分から抱きしめた。

 「優斗、相変わらず泣き虫だね」
 そう言うと腕の中で笑ってくれる。
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