Bella Notte
 ―――― 翌朝早くに、優斗は仕事へ出かけた。

 採用された会社から正式なオファーレターがメールで届いたのもその日だった。
(良かった、これで第一歩)

 これからも、世界中を飛行機で飛び回る日々が待っている。
 急いで就労ビザの手続きもしなくてはならない。

 それにしても、昨夜の優斗は何だか心ここにあらずだったように思う。
(激務で疲れていたのもあるけれど、それだけじゃなかったような)

 気持ちを通じ合わせたばかりなのに遠距離恋愛をあんな風に告げたのは性急すぎたのだろうか、と。

 スマートフォンを手に取って、メッセージを打つために画面をタップする。

 すると優斗から。

 『昨夜はありがとう。直接言えなかったんだけど、実は楓との事を名前を伏せてインタビュー記事で発表する事になった。今回は関係者と事務所と色々調整しての発表だから……』

 驚きながらメッセージを読み進めると。
 『ごめん勝手な事して、楓の大切な時期に』
 そう締めくくられていた。

(私はもう大丈夫。優斗が決めたのなら、見守る覚悟ができてるから)

 『優斗、大丈夫だよ。いつも気遣ってくれてありがとう。フライトから帰ったらまた会える?』
 どうしても昨夜の優斗の表情が気になる。

 すぐに既読マークはついたけれど、返信は来なかった。
(現場に入ったかな)

***

 ―――― 楓からのメッセージにすぐに返信できずにいた。
(昨夜プロポーズして、記事の事を話すつもりだったから)

 今更ながらに忙しくても、もっと事前に話しをすべきだったと反省しつつ。

 それでも楓が新しい道を行こうとしている勇気を応援しなくてはと。

 「SAKURAIさん入られます!」
 撮影スタッフの一言で切り替えて、前を見据えた。

 
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