Bella Notte
 静かに頷いてくれる瞳は少し潤んでいる。

「すごい、私たち同じこと考えてたんだ」

「いや、やっぱり楓には適わないよ」
 心底楽し気に笑うその表情に、思わず心を掴まれる。

「最高にカッコいい自分でいたいと思うのに、楓の前だとそれができない」
 そう言って優しく左手を握られて。

「そんな、優斗は世界一カッコいいよ。いつも努力家で、それを見せないようにしているのなんか……」

 そこまで言葉を紡ぐと、優斗がテーブルを回りこんできつく抱きしめてくれる。
 
「ありがとう、指輪受け取ってくれる?」
 少しだけ震える声で聴かれて。
「うん、喜んで」

 座ったままの私の左手を取って、片膝をついた桜井が指輪を薬指に滑り込ませる。
 アクアマリンの輝きは、2人の故郷の海を思い出すくらい美しい。

「楓、俺からも言わせて」
 深呼吸を1つ。

「結婚してください」
 思わず涙が溢れて、優斗が優しく指先で掬ってくれる。
「はい、よろしくお願いします」

 返事をすると、優斗が嬉しそうに微笑んでそっと唇を重ねてくる。
 それは今までしたどのキスよりも心がときめいて、忘れられないキスだった。
 

 ―――― 3月末日、羽田空港でイギリス行きの便を待っていた。
 アプリでチェックインを済ませたので、あとは搭乗口へ向かうだけ。

 あれから、就労ビザを超特急で申請してやっと許可が下りた。
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