Bella Notte
 突然そんな事を言い出す健人君が、優しさの中に少しの感傷を混ぜた視線を向けてきた。

 「節子さんが話してくれたことがあって。忙しくて楓ちゃんをかまってあげられない時、決まって優斗君が遊びに来てくれて。結婚の意味も良く分かってなかったけど、『楓ちゃんとずっと一緒にいれるなら結婚しよう』って言ってたらしいよ」

 優しく微笑んでそう言ってくる。

 「……有言実行、だな」

 優斗が誇らしげに笑っている。

 「えっ、その約束ずっと覚えてたの?」

 そう言うと、少しバツが悪そうに。
 「正直、覚えてないかも」
(今話を聞いて思い出したけど、少し恥ずかしいから)

 「えっそうなの?なーんだ。私も正直……」

 そう言って朗らかに笑う楓を優しく抱きしめた。

 「じゃあ、先に行って待ってるからね」

 健人君が気を効かせてくれたみたいで、サロンから出て行った。

 「そんな大事な事忘れちゃうくらい、長い間一緒だったんだよね」

 そう言って甘く楓を見下ろすと、幸せそうに微笑んでくれる。

 「でも、あっという間に思えるよ。優斗と一緒なら」

 その言葉に優しく楓の下腹部に手を添えた。

 「この子が生まれる時またここに帰ってきたいな」
 そう言うと。
 慈愛の溢れる視線でその手を見つめながら、神聖で美しい母の顔をしていて。

 「そうだね」

 そう言って笑ってくれた。

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