Bella Notte
「そうだよ。って事は(かえで)もそろそろ結婚か?あの男と」

 後ろから悪友の声が聞こえてきて、思わず振り向く。

「うわー。桜井(さくらい)だ」

 今は触れられたくない元カレの事。

 そして、それを抉るように話してくる今一番会いたくない奴がそこにいる。

 相変わらず麗しく、爽やかな笑顔で私の側へやってくる。

 長身で黙ってれいば眉目秀麗。
 仕立ての良いスーツを品良く着こなし、優雅に歩く姿は女性なら誰でも見惚れるだろう。

 そう、黙っていれば、だ。

「お前、相変わらずだな。このオレにそんな視線よこすなんて」

 苦笑気味に顔を歪ませながら楽しそうな声を出してくる。

「えっ、だって桜井はあの桜井でしかないし。今さらきゃー何てなったらどうよ?」

 そう言えば一瞬思案顔。

「いや、ないわ」

 爽やかな笑顔で失礼極まりない一言を放つ。

「変わってなくて何よりね」

 意地悪な笑みでこちらも応戦する。

「お前もな」

 不敵な笑みと共に返される。
 こんなやり取りも直接したのはいつぶりだろう。

 元カレと付き合いだしてから会ってないから、かれこれ半年。

 久しぶりに気心知れた仲間と遠慮なく言葉を交わす。
 学生時代から変わらない私の大好きな居場所だ。

 たった半年会わなかっただけなのにもう何十年も会っていないような気さえしていた。

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