Bella Notte
 ―――― 楓はいつもそう。強くないのに強がって、突き放してくる。

 桜井(オレ)が楓の心のその柔らかな部分に触れようと何度近づいても決して触れられない。
今だって美しい微笑みに気持ちを隠してオレを遠ざける。

 悪友時代が長すぎて、もうこの立ち位置から動けそうにもない。


 そう。
 惚れた弱みだと気付いたのが中学時代。

「こんな事言ったら井川から怒られるだろうけど、花嫁(ますだ)さんより(おまえ)のほうが綺麗だよ」

 そう言ってもきっと楓は相手にもしてくれない。
 きっとあの日みたいに、この手をすり抜けていく。

***

 
 ――――いつもなら、桜井の悪い冗談だと軽く受け流すハズなんだけど。

 このタイミングで久しぶりに優しい励まし何てするものだから、思わず涙目になり少し俯いてしまう。
 あの日もそうだったな。
 あの雨の日。

 文化祭が間近に迫った放課後の作業時間。
 金木犀が香る甘くて苦い思い出。

 
 
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