Bella Notte
 桜井とはあれから少しだけ気まずい思いもしたけれど、看板は無事に完成した。

 相変わらず悪戯や憎まれ口を叩いてくるのでそれも気のせいと今ではすっかり元通り。
 今日は、午前中は本部で待機してトラブルがあれば対処する係。

 それが終われば、茶道部のお手伝いを少しした後、自由時間。
 だけれど。

「ヒマだね。桜井」

 忙しいかと思ってたけど、そんなとこは無かった。
 むしろ準備期間の方が忙殺された日々だった。

 1人思いを馳せた。
 桜井なんて、私の話も聞かず窓辺の椅子で寝に入ってるし。

 でも、頑張ってたもんね。
 要領がいいから、仕事たくさん掛け持ってそれでも弱音吐かなくて。

 桜井はいつもそう。
 小さな頃から変わらない。

 起こしてあげようかと迷いながら、桜井の側へ行く。
 変わらないあどけない寝顔。昔は夏休みの時によくお昼寝を一緒にしてた。

 サラサラの明るい栗色の前髪が閉じられた長い睫毛に微かに触れている。

 その顔を見てたら素直に言葉が口をついて出た。

「頑張り屋さんだもんね。本当にお疲れ様」

「それから、この前はありがとう」

 起きてる桜井には絶対言えない。
 独り言がおかしくなって小さく笑った。


 ―――― 楓と2人きりが嬉しい反面、抱きしめた日から少し気まずい気持ちも正直まだ燻っている。

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